新しい『ゴーシュ』へ



ここでは、再々演となる『セロ弾きのゴーシュ』への思いを、
前回までのゴーシュに関わった人、観劇した人、
今回初めてこの作品に関わる人から寄せていただいています。




〜Vol.1〜 鈴木 喜三夫 (演出家)                            
    新しいゴーシュが来年、生まれようとしている。 2回の『ゴーシュ』(97・99年)を   
   演出した私にとっても、どんな作品が生まれるか楽しみだ。 しかも、新しい演出が作者、吉   
   田清治さんの愛弟子である高平和子さん(クラルテ)と聞き、嬉しくなった。 高平さんも道   
   産子―何故か、何となくホッとしている。                          
   そんな思いとは別に、吉田さんがこの芝居を通して札幌の人形劇人に問いかけた「質の向上」   
   に、はたして私の作った2回の『ゴーシュ』は少しは役に立ったのだろうか。 改めて前2回   
   のプログラムに書いた自分の言葉を読みながら自問自答している。 そして、それは来年の『ゴ  
   ーシュ』を観ることによって解答がでるのかな―そうも思う。 『ゴーシュ』が高平さんの手   
   によって新しく生まれ変わった時、それにどう関わったかが問われるに違いない。 札幌の人   
   形劇人が、前2回の『吉田提案』(経験者たちの質をあげよう)をどのように自分たちの問題   
   として考え、どのように努力してきたか―それが見えてくると思ったのだ。           
    三度、チェロの土田英順さんが力を貸してくれると聞く。 嬉しいことだ。          
    最後に、再演の演出の言葉で「私が人形劇人として新しい作品を作ること」と締めくくって   
   いる。 この言葉がどうしても胸に刺さって仕方がない。 私は人形劇人として新しいものを   
   作り出したのか―。 やはり重い。                             
    そんな意味からも、来年の新しい『ゴーシュ』が待たれる。     (2003・11)   


〜Vol.2〜 佐藤 健司 (くれよん座)                           
    今回で三回目となる『セロ弾きのゴーシュ』の公演は、私としてもとても楽しみであり、期   
   待に胸が躍っております。 私は97・99の公演で、演出家、鈴木喜三夫先生の指導の下、   
   ゴーシュを演じさせていただきました。                           
    この作品は、宮沢賢治の原作の童話で、当然読まれている人も多く、その人達がそれぞれ心   
   の中でゴーシュの世界を広げている。 観に来てくれるお客さんは、自分が持つゴーシュの世   
   界と、人形で表現される目の前の舞台が重なっていくところに観ていて心地良さを感じるし、   
   また自分が気付かなかった新たな世界の発見に期待しているところもあると思う。 冬の祭典   
   は回を重ねるごとにリピーターを増やし、芝居を観る目が肥えている人が数多く来る。 その   
   人達に満足してもらえる芝居を作るには、本番の舞台の幕が開くまで苦労が続くと思います。   
   でも、最後の舞台の幕が閉じる時に味わう達成感を参加者全員で感じられるよう、頑張って下   
   さい。                                          
    また、今回の演出に、クラルテの高平さんに来ていただいていると聞いていますし、キャス   
   トのほとんどがダブルキャストとなっていて、2組の違ったゴーシュが出来上がると聞いてお   
   ります。 限られた時間の中で2組の稽古。 大変だとは思いますが、お互い意識しながら『ゴ  
   ーシュ』と共に成長していって最高の舞台を見せてください。 期待しています!        
    ところで、新しいゴーシュさん。 最後のセリフ「ああ、かっこう。 あの時はすまなかった  
   な。 おれは怒ったんじゃなかったんだ。」は、どうですか。 私は今も自分の中で表現しきれ  
   ていません。                            (2003・12)  


〜Vol.3〜 『冬の祭典に向けて』   演出担当 高平 和子 (人形劇団クラルテ)      
    今、本番に向けて稽古の真っ最中で稽古場は熱気で溢れています。              
    劇中で楽士達が稽古を終え「お疲れ様!」「じゃあ、又明日!」と言って帰るシーンがありま  
   すが、まさに毎日がお芝居のシーンと同じで、中学生、高校生、大学生、社会人、お母さん達と  
   本当に幅広い年齢層で今、「セロ弾きのゴーシュ」を創り上げようとしています。 この作品は  
   札幌の人形劇人にとっても、私達人形劇団クラルテにとっても大切な作品で時代を越えて何度も  
   上演されてきました。 先輩達の残してくれたこの作品を再演という気持ちは忘れて、初心に戻  
   り、人形劇を愛する豊かな気持ちをゴーシュの世界に挑戦してみたいと思っています。 登場人  
   物の感性を大切に新鮮で煌めきのある、豊かな世界を創れたらいいなあと思って稽古に励んでい  
   ます。 人形劇に登場する人形はおおむね優しく愛くるしい。 そうでないと、愉快で楽しく想  
   像的な世界はつくれないと思います。 そして、その人形を使う役者達は人形の優しさ、愛くる  
   しさ、激しさに負けない感性を持って人形に挑んでいかないと人形を使って表現することから離  
   れて人形に使われてしまう。 使い手と人形の葛藤が見ている人の想像力をかりたて、感動を呼  
   ぶ。 今、まさにそれぞれの感性で役にぶつかっている。 人形劇への情熱はプロもアマも同じ。 
   はじめて参加した人もどんどんコミュニケーションをとりあい、新鮮な目線で挑んでいます。   
    若い人の活躍も頼もしく、ベテランの奮闘ぶりも素敵です。 作品の持つ魅力にみんなでとり  
   つかれ、そしてそこから又、次の創造のエネルギーを生み出せたらいいなあと思い、私自身も奮  
   闘中です。                                        
    美術、演出のスタッフの力もさすがに強力です。 そして、本番には土田英順さんの生演奏が  
   力強くそして豊かにゴーシュの世界を広げてくださる事を心待ちにしながら、さあ、いよいよ稽  
   古も大詰めを迎えていきます。                               
    是非、多くの方に見ていただけるよう、お力添えを宜しくお願い致します。          
                                      (2004・1)  


〜Vol.4〜 『ブキッチョで下手くそなゴーシュ』より   あらい あい (ふ〜ふ〜は〜は〜) 
    正直言って、よく知らなかったんですよね、この話。 とても有名な作品でありながら、読ん  
   だ覚えはなく、前回の上演の際には、まだ人形劇の世界に入っていなかったので、見ていません  
   でした。 それが、今回出演することになったので、原作を読みました…さっぱりわかりません  
   でした。 そこで、インターネットで調べたり、アニメ化されたビデオを見たり、解説本を読ん  
   でみたり…。 寝ても覚めても頭の隅にゴーシュが居て、初夢にまで出てきました。       
    さて、自分の考えるゴーシュを表現できるかどうか不安ではありますが、ゴーシュのごとく動  
   物達に助けてもらい、がんばってみたいと思います。                     
   「体が丈夫だから、こんな事も出来るんだ。 普通の人なら死んでしまうからな。」…ハイ。   
                                      (2004・1)  


〜Vol.5〜 新しい『ゴーシュ』より   角野 彬人 (ラクダノセナカ)           
    ゴーシュさんは、努力家だなぁ。 僕は寝ることもおしんで何かにあそこまで打ち込むことば  
   できません。 いや。テストの一夜漬けにはしていたような…。 でも、今回はそれに迫る勢い  
   で努力したいと思います。 今日の失敗を明日に生かし、明日の失敗は明後日に生かして。    
   本番の日には、僕ができる最高のゴーシュをみんなに観てもらいたい。 観てくれた人が何かを  
   感じてもらえたらうれしいです。                              
    「あー、かっこう。 あの時はすまなかったな。 おれは、怒ったんじゃなかったんだ。」   
   このセリフ、まだまだ読みきれてません。 本当に難しい…。 二人使いもセロを弾くのも…。  
   初代ゴーシュさんに負けないくらいの、僕らしいゴーシュを演じたいです。           
    「10日前と比べたら、まるで赤ん坊と兵隊だ!」うん、…言われてみたい。         
                                      (2004・1)