こどもの劇場通信2005年3月号(No.171)に掲載されたコラムを、ご紹介します。


 2月は「人形劇フェスティバル2005年さっぽろ冬の祭典」の『ミラクルモンキー悟空〜鬼幻城の怪物
(モンスター)』と『青い鳥〜しあわせになるための冒険』を、やまびこ座で観ました。        
 毎年人形劇関係者が集って大型人形劇を作るこの祭典、もう20年以上続いてるんですね。 作品持ち寄
り形式だった時期もあったようですが、年に1度の合同作品づくりは、いろんな意味で札幌の人形劇シーン
の底上げにつながっているんだなと改めて感じました。                       
 さて今年の2本、基本的にはどちらも有名なお話ですが、前者はオリジナルエピソードを展開、後者もか
なり意欲的な脚色の入った作品となっていました。                         
 特に『悟空』は随所に若さと遊び心があふれとても楽しめました。 前半から中盤はいろんな遊びに笑わ
されながら、ぐいぐい引っ張ってもらいました。 ただ終盤、要素を盛り込み過ぎたせいか、いささか説明
的になっていたのが残念。 でも人形劇の楽しさが存分に味わえたと思います。            
 一方の『青い鳥』。 こちらはちょっと松本の感性にはビビッと来ませんでした。 原作は3時間以上か
かる量ですから削らざるを得ない。 ところがもともと全体の流れが命の作品ですから、脚色するにしても
「青い鳥をあちこち探しにいくけど戻ったらうちにいた」という構造は崩すわけにはいかないんですね。 
そしてオリジナルとつい比較してしまいます。 まつもとには今回の作品は全体に淡白になりすぎに感じら
れ、うまく入り込めなかったんです。                               
 と書きながら、実は原作からもっと離れて受け止めるべきだったかと、後から反省したりもしています。
チルチルが父親に反発しているところで始まること自体、実は原作にない設定ですものね。       
 そんな反発からの冒険として見れば、納得できるところも出てきます。 でもそれがどうもしっくりこな
いのは、青い鳥自体の設定との折り合いがつけきれてなかったからではないかしら。 脚本だけの問題では
なく、演じる人たちの意識も含めて。                               
 もちろん、巨大な青い鳥など人形劇らしい工夫は随所にあって、はっとさせられるところもけっこうあり
ました。 そういえば今年は2本とも、稽古だけでなく人形づくりもゼロからこなしてきたそうです。  
そのエネルギーには文句なく脱帽。 お疲れさまでした。                      
                                【松本直人の劇場で会いましょう】


 筆者・松本直人さんは、札幌で演劇・読み語りなどで活躍されている方ですが、近年劇場プロデュースの人形劇
公演(トトコとまほうのなかまたち・リュウタとポチャとくるみの木)にも参加されています。        
昨年の“セロ弾きのゴーシュ”もご覧いただき、劇評をお願いしました。 今回は少し辛口のコラムですが、アン
ケートにもいろいろな声が寄せられていますし、今後も続く私たちの活動にプラスになると思い掲載させていただ
くことにしました。 転載を快諾してくださった松本さん、ありがとうございました。